よしながふみ「こどもの体温」「愛すべき娘たち」「フラワー・オブ・ライフ」(bk1)

 よしながふみの(801ではない)連作作品集と学園もの(共学)。
 連作短編集はどちらも家族の話ではあるのですが、前者は「男の子」の視点、後者は「女の子(もしくはかつて『女の子』であった女性たち)」の視点で描かれています。これらの作品に見られるように、一見エキセントリックだけれどもそれぞれに切ない事情を抱えているキャラクターが出てくるシビアな話をドライな絵柄で淡々と描く、というのがよしながふみの作風なのですが、当事者たちにとっては切実な状況なのに第三者視点から見るとついつい笑ってしまうという「笑いどころ」を作るのがうまい作家でもあります。
 そのコメディ作家としての本領を遺憾なく学園ものの舞台で発揮しているのが「フラワー・オブ・ライフ」でしょう。秀逸な同人ヲタライフ描写ともあいまって、読んでいる間笑いが止まりませんでした。

 この人の現実(あるいは人生)に対する認識にはわりと情け容赦のないものがあるのですが、その裏から諧謔と愛情がにじみ出ている点では塩野七生とも共通するものがあるかもしれません。非常に力量のある作家なので、内容的にも入りやすいと思われる(何)上三作は文句なしにお勧め。