読書

SFブックガイド、完成しました

8/25の「SF初心者に捧げるSF小説n冊」にて「建設予定地」となっていた以下のセクションを加筆、その他のセクションも細部を少し書き直したりしました。 サイバーパンクの残り火──出色の三編 サイバーパンクの後継者──絶望と希望の狭間で 「SFだからこそ」書…

SF初心者に捧げるSF小説n冊

IRCにて、まうきち先生から「お勧めのSF小説教えてください」とのお達しがあったので、よーし頑張って布教しちゃうぞ!という勢いでSF初心者にお勧めの本をまとめてみました(本日記を読んでいらっしゃる方のうち、どれくらいが非SF者なのかは考えないことに…

高橋葉介「夢幻紳士」 冒険活劇編1/幻想編/逢魔編 (bk1)

80年代初頭に連載されていた「夢幻紳士」をコミック文庫で復刊したのが冒険活劇編、それをもとにガラリと趣向を変えた同じ主人公の連作短編を新しく「ミステリマガジン」に連載しているのが幻想編と逢魔編、という関係のようです。 「冒険活劇編」はその名の…

よしながふみ「こどもの体温」「愛すべき娘たち」「フラワー・オブ・ライフ」(bk1)

よしながふみの(801ではない)連作作品集と学園もの(共学)。 連作短編集はどちらも家族の話ではあるのですが、前者は「男の子」の視点、後者は「女の子(もしくはかつて『女の子』であった女性たち)」の視点で描かれています。これらの作品に見られるように、…

ニール・スティーヴンスン「ダイヤモンド・エイジ」(bk1)

相変わらずのスティーヴンスン流。現時点では著者の持ち味が一番いい形で出ている作品だと思います。ハードカバーでは数年前に出ていたのですが、文庫落ちしたので購入。 スピード感のある展開の中にこれでもかとばかりに色々と小ネタを盛り込む、一種ペダン…

西川魯介 「野蛮の園」(2)

相変わらずアフォなネタ連発で疾走していますが(褒め言葉)、魯介マンガからは「真面目にバカなことをやっている」という印象も受けます。バカであることに対して真面目であるというか。本棚に並んでいる本のタイトルなど、小ネタのばらまき方も丁寧だし……。 …

ウォルター・J・オング 「声の文化と文字の文化」

IRCの某チャンネルで常々「ふくだマジレス禁止」だの「ボケがつまらん」だの「ふくだオチはー?」だのと言われていることに対する「何でそう言われなあかんねん」という疑問というか鬱屈を解消してくれるかな、と思って手を出したのですが、単にそのへんの事…

マリオン・ジョンソン 「ボルジア家 悪徳と策謀の一族」

「ピルグリム・イェーガー」を読んでなんとなくルネサンス期イタリアづいている時期に書店で見かけたので衝動買いした一冊。 ボルジア家といえば塩野七生さんが「チェーザレ・ボルジア あるいは優雅なる冷酷」でチェーザレを、「神の代理人」でその父である…

佐藤大輔 「皇国の守護者」(1〜8)

微妙に再読フェイズに入ってしまったので、続けて「皇国の守護者」シリーズを読み直し。ある意味新刊欠乏症を加速させるような愚挙ともとれますが、その気になれば世の中には面白い本は沢山あると思っているので、御大信者ではありますが新刊を求めるあまり…

谷甲州 「天を越える旅人」

チベット仏教ネタの面白い本あるよー、ということで色々な意味でツワモノな友人に貸していたのですが、戻ってきたので自分でも再読。冒頭から中盤まではチベットを舞台にした山岳小説として話が進みますが、中盤から終盤にかけては曼陀羅を媒介とし、仏教的…

浅羽通明 「ナショナリズム──名著でたどる日本思想入門」

もともと国家論、ナショナリズム論に興味があるので手を出してみた一冊。明治以来の(近代国家としての)日本のナショナリズムの発祥とその変遷をたどった本です。戦後日本ではナショナリズムというととかく粗暴さや対外膨張志向を伴う無謀なまでの積極性と結…

A・J・トインビー 「現代が受けている挑戦」

トインビーの本は一度読んでみたいと思っていたところ、たまたま家の本棚に転がっていたので手にしてみた一冊。トインビーだということで楽しみにしていたのですが、翻訳が最悪でした。この日本語の悪文っぷりは「巨人」シリーズの比ではありません。音引き(…

ジェイムズ・P・ホーガン 「内なる宇宙」(上・下)

「巨人」シリーズの最新作。ホーガンだけあってアイデアとストーリーは読ませるのですが、「巨人」シリーズはお世辞にも訳があまりよいとはいえず、日本語の文のもっさり具合で読む楽しさが大分削がれてしまっているような気がします(それでもグイグイ読ませ…

冲方丁・伊藤真美 「ピルグリム・イェーガー」(1〜3)

いやもう塩野七生ファンからすると「キタ━━━(゜∀゜)━━━!!!!」と叫ぶしかない作品です。舞台はフィレンツェの修道士ジローラモ・サヴォナローラが火刑に処せられた後のイタリア。ルネサンス時代の世相を背景としてヴァティカンの思惑にメディチ家やエステ家、…

冲方丁 「微睡みのセフィロト」

冲方節が炸裂している割に内容はコンパクトに収まっているという、ある意味すごいのか勿体ないのか判断に困る本です。いろいろと膨らませれば、この3〜4倍の分量を持つ本は楽に書けると思うのですが、こういうサイズに収めるのも悪くはない気がするし。 とは…

安部重夫 「イラク建国 『不可能な国家』の原点」

第一次大戦後のイラク建国の青写真を描いた英国の才女、ガートルード・ベル(1868〜1926)の生きた時代を描き、メソポタミアの砂漠に安定した国家を建国することがどれほどの難事業であるかを明らかにしてくれる本です。大英帝国の植民地統治のあり方や、現今…

大澤武男 「ローマ教皇とナチス」

第二次大戦期の教皇ピウス12世(本名エウジェニオ・パチェリ)がなぜナチスのホロコーストに対し沈黙したのか、ということを教皇自身の生い立ちや当時の国際情勢、教会内事情などから探っている本です。 本書では、ヴァティカンの沈黙の要因として下記のいくつ…

大河原遁 「王様の仕立て屋」(2)

妙にすれているというか耳年増っぽい新キャラのマルコ君がいい味を出しています。しかし、彼がはまっている日本のマンガって、まさか「ピルグリム・イェーガー」のイタリア語版じゃないよなぁ……?*1 *1:以前原作者のサイトで、イタリア語版が出るという記述…

高屋奈月 「フルーツバスケット」(14)

冷静に考えるとものすごくヘビーな話なんですが、それを重い雰囲気を感じさせずに一気に読ませてしまうあたりは作者の手腕なのか人徳なのか。十二支の人々のエピソードは大体出てきたので、今後数巻くらいでクライマックスに突入するのかな。

犬上すくね 「ういういDays」(1)

犬上さんのマンガはいつもくすぐったいやら笑えるやらで、内心ではゴロゴロ転がりながら読んでいるのですが、いやー、今回もええもん見せていただきました(-人-)。今後の展開に期待。

後藤羽矢子 「どきどき姉弟ライフ」(3)(4)

いつものほんわかとした後藤節。いつのまに完結していたのか……。そして3巻で犬上さんがゲストしているのに飛び上がってびっくりしますた。ハッピーエンド完結でよかった。あと石田さん萌え(何

大井昌和 「ひまわり幼稚園物語 あいこでしょ!」(3)(4)(5)

子供の話を描くのがうまいなぁこの人は。メインキャラの二人のお話だけでなく、個々の周辺人物もキャラクターが立っているし、ちゃんと彼ら/彼女が主役を張るエピソードも出てきます。とはいえ、かつていじめられっ子だった身からすると、この子たちはある意…

中島零・むぎむぎ団 「ナースウィッチ小麦ちゃんマジカルて」

適度なお色気路線とテンション、2ちゃんねる的なノリが楽しいです。

横井勝彦 「アジアの海の大英帝国 19世紀海洋支配の構図」

大英帝国がインドから極東(具体的には中国大陸沿岸部の市場)にその勢力圏を伸ばし、造船テクノロジーにも帆走から汽走、木造艦船から鉄製艦船、さらに装甲艦の登場という変革が訪れていたのが19世紀という時代です。本書はこの時代における造船テクノロジー…

櫻田淳 「国家の役割とは何か」

近代国家(もう少し厳密には『近代国民国家』)とはどういう意義や役割を持ったシステムなのか、ということを、そもそも「秩序」とは何か、「政治」とはどういう営みなのか、ということから平易に説き起こしています。論点は網羅的かつ体系的だし、文章もこな…

松村劭 「海から見た日本の防衛」

対馬海峡の戦史から海軍戦略の基本的原則について述べるとともに、日本の海洋国家としての国防のあり方を問う本。松村さんの本はいずれも戦史という現実のケーススタディに依拠しているうえ、文章が明快で読みやすいので、戦略・戦術の入門書として最適だと…

スティーヴン・ジェイ・グールド 「フルハウス──生命の全容── 四割打者の絶滅と深化の逆説」

グールド分を補充してみますた。 統計が示すトレンドをどう読みとり、そこからどのような世界観を組み立てるのか、という観点から見てみると非常に面白い本です。データ分析や統計学をこれから勉強しますよー、という人で、なおかつ生物学や進化論にちょっと…

小川一水 「第六大陸」

小川一水の月面開発もの。バックグラウンドの政治的情勢についてはちょっと楽観的すぎるかなーという気もしなくはないですが、今日びちょっと気恥ずかしいくらいにロマンを全面に押し立てていながら、技術的な面やストーリー展開、ビジネスとしての構想など…

佐藤大輔「皇国の守護者8 楽園の凶器」

新刊が出るたびに某板の飢餓感に苛まれた信者たちが「まただ、また偽電に違いない」「○○方面、索敵結果ハ如何ナリヤ」などと狂騒的な祭りを繰り広げ、数スレッドを一瞬のうちに消費してしまうある意味恐ろしい作家、「御大」こと佐藤大輔氏の新刊です。 我々…

菅浩江「永遠の森 博物館惑星」

この「博物館惑星」はSFマガジンに連載されていた時にちらっと読んでいたことがあるのですが、単行本が文庫落ちしたので、改めて買って読んでみました。 菅さんの本は、中高生のころに「メルサスの少年」、「記」、「オルディコスの三使徒」、「氷結の魂」、…