清原なつの「千の王国 百の城」

 SF好き、歴史好きにはたまらない短編集。アレクサンダー大王没後すぐの時代のアレクサンドリアの大図書館とか、火星のテラフォーミング独立運動、とかいうキーワードにビビっとくる人は読むべきです。
 作者は生物学関連(類人猿?)の研究者だそうで、そちら方面に興味のある人なら思わずニヤリとするような小ネタが結構色々な作品にちりばめられていますが、それをメインテーマに据えたのが本書に収録されている「金色のシルバーバック」と「銀色のクリメーヌ」。非常に人間に近いのにそれでもやはり人間ではないゴリラやサルと人間の間の異種間恋愛という、ある意味では定番かもしれないテーマですが、前者はわりとユーモラスで救いのある終わり方をしています。それに対し、後者は哀切というかなんというか……。読み終えた後はしばらく鬱になってしまいました。まぁ安易にハッピーエンドにしないあたりがこの人の作風であり見識だとは思いますが、あまりにも救いがないぽ……。
 あと、個人的にツボったのは、「お買い物」と「アンドロイドは電気毛布の夢を見るか?」に出てくるアンドロイドを扱っている骨董店の店主の名前がイシバシ氏だということ*1

*1:いや、割とどーでもいいんですけれどそこは……。