アン・ライス「夜明けのヴァンパイア」

 らみゃ師匠お薦めの「ヴァンパイア・クロニクルズ」の第一作。18世紀のニューオーリンズやパリをはじめとした舞台や情景の描写は素晴らしいし、人物造形にもストーリーにも水準以上のものがあるのだけれど、あまり主人公のルイに感情移入できない。ルイの世界観、ものの見方、心情がどうも腑に落ちないのだ。「神」や「罰」、善悪二元論といったキリスト教的な世界観や概念に馴染みがないからかもしれないが。他のキャラクターについても、それなりに理解はできても今ひとつ感情移入できない*1
 悪くはない、決して悪くはないのだけれども、ある一線を超えてこちらに迫ってくるようなグッとくる感じがなかった。訳文が生硬なせいもあるのかもしれないが、どうにも不完全燃焼の印象が拭えない一冊。
 ……と思って次作の「ヴァンパイア・レスタト」にかかったら、うーんと唸ってしまった。まだ序盤しか読んでいないけれども、「夜明けのヴァンパイア」ではルイの視点から粗野で理解しがたい人物として描かれていたレスタトが、実はすばらしく魅力的で共感できるキャラクターとして立ち現れてきて文句無しにグッとくるし、面白い。訳文にも違和感がないし、こちらに期待してみよう。

 以下、自分向けメモ。
ヴァンパイア・クロニクルズ正伝

同・外伝

  • 「パンドラ、深紅の夢」
  • 「美青年アルマンの遍歴」
  • 「呪われた天使、ヴィットーリオ」

*1:いやまぁ、クロウディアたんに萌えなかったといえばウソになりますが……