「撮る」ことの愉しみ: RICOH GR Digital



 昨年はほぼ一年間、リコーのGR Digitalというコンパクトカメラで写真を撮っていました。例えば秋の空や、かもされてきましたの写真はGR Digitalによるものです。

 このカメラはコンパクトなのはもちろんですが、玩具っぽい曲線や光沢を廃したシンプルで質実剛健な筐体デザイン、手に吸い付くようなしっかりしたグリップ感とホールディングの良さ、2つのダイヤルを活かしたダイレクトな操作のできるUI、単焦点ながら28mmという使いやすい画角、画質の良さ、といった数々の美点があります。

 小型軽量で持ち歩きやすい、いじりやすくまた使っていて楽しい、ちょっと軽い気持ちで撮った一枚であっても思わぬ綺麗な画を出してくれるとあれば気に入らぬはずがなく、昨年一年間はどこに行くにもこれを持ち歩いて色々と写真を撮っていました。撮るシーンとしては、用事ついでの散歩の写真、友人とのオフ会の写真、料理の写真、というあたりがメインでしょうか。特に料理撮影の場合、広角であってもマクロモードで料理にカメラを近づけて撮影し、メインとなる料理以外の背景をぼかして全体を綺麗に見せるという技が使えます。冒頭の一枚もこうやって撮ってみたものです。

 このようにGR Digitalはコンパクトデジカメとしてはかなり理想的ではあるのですが、完璧とまではいかず、特に料理を撮るにあたってはいくつかの不満点もありました。

  • 基本的にカメラ任せのオートフォーカスで撮るため、ピントが意図した場所に合わないことがある。特定の一点にピントが合った写真が欲しいなら、用心のために複数枚同じアングル・設定の写真を撮らないといけない。
  • ホワイトバランス。夜間・屋内の飲食店で料理を撮影する場合、手動でカスタムホワイトバランスを適切に設定しないと思ったような色合いが出ない。オートホワイトバランスや白熱灯モードでは解剖写真のような色合い(色としては正確でも、青白くて不味そうな色合い)になってしまうので、例えば白熱灯を光源に使っている場面ではあえて蛍光灯モードにして撮影することが多かった。

 写真好きな人の場合、誰しも特に「これが好き」という被写体があると思います。私の場合は料理なのですが、料理を撮るときにはいつも「この旨そうなワクワクする感じをどうやって画として残すか」ということを念頭に置いています。なので、上記二点はある程度ユーザーの使い方しだいでカバーできる問題ではありますが、使っていながらとても惜しいと感じていました。