「まかせてイルか!」

 大地丙太郎監督の字幕つきアニメということで、また大地ファンの先輩に貸してもらったもの。
 キャラクターといい、独特の高いテンションといい、舞台設定といい、確かに映像としてはとても楽しくて魅力的なのですが、ストーリーとメッセージにはちょっと違和感があります。
 陸がなぜ「普通の子供の生活」に戻ることを選んだのか。このストーリーと台詞回しだと、単に彼が「普通ではない生活」の大変さという現実に気づいただけにすぎない、という風にもとれてしまうと思います(むしろ作品を素直に見れば、そういう解釈の方が自然なのではないでしょうか)。「普通ではない生活」がどういうものかを自覚していて、それでもそうして生きている主人公三人組が陸に対し、「普通の子供の生活」の幸せについて断定的に話してしまう終盤の台詞も、どうにもそぐわない印象があります。彼女たちにしてはあまりにも形式的なステレオタイプにはまった発言ではないかと。そういうわけで、終盤のクライマックスの部分ではどうにももにょって*1しまいました。
 監督の意気込みはわからないのではないのですが、メッセージの伝え方という点ではちょっと空回りしてしまったかな、という感じです。他の部分が素晴らしかっただけに残念。
 ちなみに手話部分の作り込みは尋常ではありません。昔シムコム(日本語対応手話)についてはちょっとかじったことがあるのですが、その経験からいっても、映像表現としてかなり忠実なものになっています。いやあこれ、アニメーターさん、死んだだろうなあ。宮崎さんがやりたがっている多砲塔戦車「悪役1号」と手間においてはいい勝負なんじゃなかろうか。

*1:「もにょる」とは、お尻の穴がもにょもにょするようないわく言いがたい違和感を感じる、という意味