幸村誠「プラネテス」4巻

 第一部完結かー。SFヲタの端くれとしては考証や設定についてついつい突っ込む視点で読んでしまうのですが、そういう点での違和感は感じませんでした。世界をきっちり考えて作った上で、宇宙少年(現役かOBかは問いません(笑))やSFヲタ以外の人たちにも楽しめるような普遍性を持ったお話を展開できている、という意味で出色の作品だと思います。星雲賞のコミック部門で受賞、というのは妥当な評価でしょう。しかし星雲賞コミック部門、「プラネテス」の前年はCCさくらが受賞しているのか……(苦笑)。

 幸村さんが今後何を描くのか(このまま第二部にいくのか、あるいは一旦保留して別の作品を描くのか)が気になりますが、今後も追っかけていきたいところです。

 まぁ、とりあえず4巻で面白かったところについて個条書き。

  • フィー姐さんってこういうキャラだったのか……。序盤では焦るハチに道理を説いて諭す姐御という印象だったんですが(それでも時々はじけたりするけど)、今回は突っ走っているなぁ :D
  • タナベ(この巻では旧姓になっていますが)のノロケ。「男爵」と話している場面で、彼に「ホシノさん」と呼ばれて照れているんだけど、なんなんだこの照れっぷりは……。正直に言うと彼女はあまり好きなキャラではなかったのですが、このシーンでなんか毒気を抜かれて「ま、いっか」と思ってしまいました。
  • 軌道機雷の運用法。なるほど、地球および月の周回軌道と地球・月間軌道しか主要航路がない世界(つまり、航海に例えるとやっとこさ陸地伝いの沿岸航海を始めたばかりの段階)だとこういう運用法になるのか。ケスラー・シンドロームの話もそうだけど、技術的な背景を十分に考えて話に反映させているところが良いです。
  • 最終話、最後の場面でのロックスミス氏の台詞。これを見て、この人がどういう人生を送ってきたのか興味が湧いてきました。番外編の短編とかそういう扱いでもいいので、幸村さん描いてくれないかなー。