「イノセンス」日本語字幕版

 SFヲタの端くれなら当然見るでしょう、という感じの映画ですが、日本語字幕版上映の告知が公式サイトにあるので、それを見てふらりと見に行ってしまいました。しかも二回。以前(10年くらい前)ならこういうのは、映画会社から「一ヶ所で一回しかやりませんがそれでよければ……」というような細々とした開催のお知らせが関連団体に細々と回ってきて、細々とFAX連絡網で情報が流されていたんですが、いやー進歩したもんだ。それでも該当する日の上映スロット全部が字幕版じゃない場合もあったりして、結局電話で上映館に確認するのが一番確実だったりするわけですが……(´・ω・`)
 で、まぁ、雰囲気としては土俗的サイバーパンクラブストーリー風味、とでもいうんでしょうか。劇中歌として使われる怨念のこもった感じの傀儡謡とか、択捉のシーンで出てくる遠神恵賜の歌とか、義体やコンピュータで埋め尽くされた世界観とは一見対称的に見えるいかにも東洋的・土俗的なイメージが面白かったです(択捉の場面での色彩感覚や意匠は日本というよりも大陸的だけど)。
 映像美という点から見れば相当に高いクオリティがあるし、純粋にそれを楽しむために観るというのもありでしょう(かといって、択捉上空を飛行するティルトローター機の翼の機械と生物が融合したような動きにハァハァするのもどうかと自分ながら思ったりしますが)。
 ただ、あちこちで既に耳にタコができるほど言われていることではありますが、話や世界観についてはSFヲタや原作/前作ファン、あるいは押井ファンのための映画だと思ったほうがいい気がします。一般人向けに話題作としてプロモーションするのはちと、その、いかがなものかと(師匠風)。まぁ、そうでもして話題性を出して興行的に盛り上げないとあれだけのものは作れないだろうし、押井さんや宮崎さんが斜陽の日本映画界の数少ない看板になっている現状を考えればそういうふうになるのも納得はいくんですが。
 で、肝心の字幕ですが、非常に丁寧でよい作りでした。単語の表記や表現が映画内のターミノロジーや設定にきちんと一致しているし、劇中歌の歌詞や効果音もうまく説明しています。さらに、フォントにもちゃんと配慮してあって、あの映像の中に字幕の文字列が流れていても違和感がない。ただ、映像自体がすでにかなりの情報量を持っている上、それに加えて字幕で台詞や歌詞を追っていくとなると視覚経由の情報処理がおっつかなくなりそうで、結局一回目はついていくのが精一杯でした(苦笑)。二回目はあらかじめ全体像がわかっているので余裕をもって楽しめましたが。
 まぁ、DVDが出たら真っ先に買うと思います。願わくば、あのフォントのあの字幕でまた観られればよいのですが。とりあえず、祈っておこう(-人-)