春の一日

 春らしい、というのを通り越してもはや初夏に近いのではないかと思わせる陽気の一日。こんな日は青い空に桜の色が映えてくれるに違いない、と思い、用事がてらDA21mm F3.2 AL Limitedレンズの試し撮りも兼ねてカメラを持ち出してみました。行きがけに神田川沿いで撮ってみたのが上の二枚です。桜は七分咲きか八分咲きくらいでまだ満開ではありませんでしたが、天気も考えると、桜を撮るにはこの日が今シーズンでももっとも条件のいい日だったかもしれません。この日の写真は全てISO100、ホワイトバランスはオートで撮っています。写真のセットはこちら

 用事を済ませた後はときおり写真を撮りながら青山をぶらぶらと。途中、オープンカフェを借り切って何かイベントをやっているのを見かけましたが、オブジェの色調と立体感が面白かったです。何をやっていたんでしょうね。写真のセットはこちら

 この日のもう一つのお目当てだったのが、友達から聞いて気になっていたソル・レヴァンテというイタリア菓子専門店。お店に入ってみたところ、生菓子・焼き菓子ともにフランス菓子とも違うイタリアらしさがにじみ出ているお菓子がショーケースに並んでおり、なかなか楽しめそうだという感じがしました。写真のセットはこちら

 とりあえず店内のカフェスペースに入り、お店の人にメニューを説明してもらって頼んだのが薄焼きのクッキーにグラッパ入りのクリームを詰めたカンノーリというお菓子にベリー類とソルベを添えたデザート。このデザート、クリーム自体に甘味はほとんどないのですが、口にするとグラッパの香りと味がふわりと漂ってきます。このクリームをクッキーやソルベ、ベリー類の甘味と合わせて食べるという趣向。「甘味のないクリーム」というのがちょっと意外でしたが、クリームのコク、グラッパの香りとパンチ、ビスケットの甘味、ベリー類の果実の甘味と酸味、ソルベの甘味と香りといった全体のバランスがよく、何よりもグラッパの芳香が活きていて、なかなか新鮮で美味しい一品でした。

 もともとイタリアのお酒や料理が好きということもあり、また真剣にお菓子を作っている感じがしてとても好感が持てたので、帰り際には茶菓子用に焼き菓子やチョコレートも買って帰りました。ここではランチの時間帯には料理も出しているらしいので、今度はそちらにも行ってみたいところです。

 この日一日でDA21mm F3.2 AL Limitedを屋外・屋内・料理と汎用的なスナップに使ってみましたが、どの被写体に対してもその色合いと立体感をよく描写してくれるいいレンズだと思います。ボケ味も素直な感じで好印象。また、コンパクトなパンケーキレンズなので、他のレンズを付けたときよりも全体として一回り小さく軽くなって扱いやすくなる気がします。K10Dのボディに付けてみた外観も結構格好いいので、「レンズはこれ一つだけ持っていって、ぶらりと気楽にスナップを撮りたい」という時には絶好の一本ではないでしょうか。PENTAXが汎用的なスナップ用の広角単焦点レンズとして推すだけの出来栄えはあるなあと感じました。

桜三景

 家にある桜の盆栽がちょうどいま満開なので撮ってみたものを何枚か。いずれも屋内撮影なので、「景」というのもちょっとおかしいかもしれませんがそこは気にしない方針で(何)。なお最初の一枚は18日に撮ったもので、七分咲きという感じです。

 全てK10D+フレクトゴン35mm F2.4で撮っています。一枚目と二枚目はISO400、ホワイトバランスはオート。三枚目のみISO100、ホワイトバランスは太陽光モード。

 というわけで標準レンズ(35mmフィルム換算で52mm)を使ってマニュアルフォーカスでKIAIを入れて花を撮ってみたのですが、結構しんどいですね。三次元のわりと複雑な構造をしているので、どの程度の被写界深度でどこにフォーカスを合わせるか、構図(特に前景や後景)をどうするか、という点にかなり気を遣います。広角でのスナップではなく、まじめに花を撮ってみたのは初めてですが、料理とはまた違った面白さと難しさがある被写体だと思います。

本日の糧食(2007/3/17版)



 前回から実に3年近く、久々の「本日の糧食」シリーズではありますが、実際に作ったのは私ではないのは勘弁してください(誰に言っているんだ>オレ)。母上が魚介のオイル煮とサラダ、ビーフシチューを作ってくれたのでそれで夕食。

 このオイル煮、もともとは牡蠣で作るものを母が友人に教えてもらったそうですが、そのレシピを小エビと烏賊に応用したものです。備忘録代わりに簡単に作り方(オリジナル版)を以下に。

  • 牡蠣のオリーブオイル煮:
    • 牡蠣はきれいに洗い、水気をふき取る
    • キッチンタオル(ペーパー)に並べて塩を振り、少し置いておく
    • フライパンか鍋にニンニクのスライス、鷹の爪、ローレル、粒胡椒を入れる
    • 牡蠣を並べ、上からオリーブオイルをかける
    • オイルは全体がひたひたになるくらいの量にする
    • 弱火でふつふつと5〜10分くらい煮る
    • 冷まして冷蔵庫で保存すると一週間程度は保つらしい

 シンプルな割にオイルとスパイスの香り、魚介とニンニクの旨味が一体となってなんともいえない味を出してくれる一品です。このレシピをスパゲティに応用して魚介のペペロンチーニを作ってもいいかもしれません。



 具だけでなくオイルの方もおいしく頂けるのがこの料理のミソで、オイルをバゲットにつけて食べてみると、スパイスの香りと魚介の旨味が移っているのがよくわかります。食べていてついついワインが飲みたくなる一品。

 ビーフシチューの方も、近所の駅前においしいお肉を扱っている肉屋さんがあり、そこのお肉を使って仕込んでから2-3日置いただけによいダシが出ていて、これまたワインが欲しくなる出来栄えでした。

 というわけで、家で久々に白ワインを開けてみんなで旨い旨いと言いつつ魚介のオイル煮はオイルともども完食、シチューも鍋にあるものをすっかり完食してしまいました。

 ちなみに写真はいずれもK10D+フレクトゴン35mm F2.4で撮っています(ISO100、ホワイトバランスは一枚目はオート、二枚目は昼白色蛍光灯モード)。

「忘れられない一枚」を求めて: PENTAX K10D+フレクトゴン35mm F2.4/フレクトゴン20mm F2.8



 そういったことを思いつつ一年間GR Digitalをいじくっていたところ、昨年末に飛び込んできたのがPENTAXの新型モデル、一眼レフ中級機「K10D」発売の報。最初、これを知ったときには「ふーん」と思っていたのですが、Web上のレビューや作例を見るにつけ、次第に「くわッ!これだ!これこそ俺にとって最強の料理撮影カメラになってくれるに違いない!喝!(なぜかスタパ齋藤風)」と確信するようになってきました。主な理由は以下の四点です。

  • 中級モデルの一眼レフならではの操作性の良さ。
  • AFを使う場合でも任意の測距点を指定してAFロックを使えば意図した点にピントを合わせた写真が撮れる。もちろんMFも使える。
  • ホワイトバランスの確認・設定が容易。一枚写真を撮ったら、すぐに「これを他のホワイトバランスのモードで撮ったらどうなるか?」が確認でき、その場で最適のホワイトバランス設定を確認できること。
  • いくつか上がってきた実写レビューを見たところ、明暗・色調の階調表現が非常に優れていたこと。広い範囲の明暗・色調を潰れずになだらかに綺麗に表現できる(ラティテュードが広い)。

 実際このモデルに期待していたユーザーは多いらしく、2006年末から2007年初頭にかけての年末年始の時期は非常に品薄だったのですが、あちこち探し回ってなんとか1月初めに実機を確保できました。
 
 実機をいじってみたところ、ホールディングと重量バランスがよく扱いやすい、ファインダーが綺麗、操作性がよいという特徴が感じられて非常に気に入りました。

 さらにペンタックスの一眼レフには(他メーカーの一眼レフでも可能ではありますが)ちょっとした裏技もあります。昔の一眼レフカメラ用レンズの標準的なマウントとしてM42マウントがあるのですが、M42マウント用のアダプターをカメラ本体のマウント部に装着すれば、現代の一眼レフカメラを使いながらM42レンズで写真を撮れるようになるのです(無論、デジカメWatchでのレポートにあるように露出は単体露出計を使うか、実際に撮ったものを見ながらユーザーが適宜調整しなければなりませんし、フォーカスもマニュアルフォーカスになるという制約はありますが)。

 そこでM42マウントのレンズをK10Dに付けた作例も調べてみたところ、特にある方の写真BlogにあったK10D+フレクトゴン35mm F2.4の作例(画像が多いので見るときはご注意ください)にやられてしまいました。やや暗めではありますが、色調が暖かく、立体感のある写真が撮れるのです。これで撮った料理写真の美味しそうなこと……!



 思わずあちこちを探してこのレンズを買い求め、ついでに広角用のフレクトゴン20mm F2.8をK10Dに装着した例(+その作例)も見つけてしまったのでそちらも衝動買い。

 新年早々アホのような散財となりましたが、結果としてはとても満足しています。冒頭の一枚はサンドイッチとティーポットをK10D+フレクトゴン35mm F2.4で撮ったもの。ついでにK10D+フレクトゴン20mm F2.8で撮った一枚も載せておきます。

 どちらのレンズも色調が暖かく立体感があり、場の空気感のようなものすら描写してくれます。古いから……といってバカにしてはいられない良いものも世の中にはあるのだなあと実感させてくれました。

 もちろんK10DM42レンズを使う際には先述のように露出はユーザー側が調整しないといけない、フォーカスはマニュアル、という制約があり、じっくりと目の前の被写体と光の具合を見ながら考えつつ撮るというスタイルになります。しかし、それはそれで撮るプロセス自体が楽しく感じられますし、撮ってからの出来具合を見るのもまた楽しいものです。一眼レフやその他小物を持ち出せるショルダーバッグも新調しましたし、今年もどんどん撮っていって、「忘れられない一枚」になるようなものが撮れればいいなあと思っています。

「撮る」ことの愉しみ: RICOH GR Digital



 昨年はほぼ一年間、リコーのGR Digitalというコンパクトカメラで写真を撮っていました。例えば秋の空や、かもされてきましたの写真はGR Digitalによるものです。

 このカメラはコンパクトなのはもちろんですが、玩具っぽい曲線や光沢を廃したシンプルで質実剛健な筐体デザイン、手に吸い付くようなしっかりしたグリップ感とホールディングの良さ、2つのダイヤルを活かしたダイレクトな操作のできるUI、単焦点ながら28mmという使いやすい画角、画質の良さ、といった数々の美点があります。

 小型軽量で持ち歩きやすい、いじりやすくまた使っていて楽しい、ちょっと軽い気持ちで撮った一枚であっても思わぬ綺麗な画を出してくれるとあれば気に入らぬはずがなく、昨年一年間はどこに行くにもこれを持ち歩いて色々と写真を撮っていました。撮るシーンとしては、用事ついでの散歩の写真、友人とのオフ会の写真、料理の写真、というあたりがメインでしょうか。特に料理撮影の場合、広角であってもマクロモードで料理にカメラを近づけて撮影し、メインとなる料理以外の背景をぼかして全体を綺麗に見せるという技が使えます。冒頭の一枚もこうやって撮ってみたものです。

 このようにGR Digitalはコンパクトデジカメとしてはかなり理想的ではあるのですが、完璧とまではいかず、特に料理を撮るにあたってはいくつかの不満点もありました。

  • 基本的にカメラ任せのオートフォーカスで撮るため、ピントが意図した場所に合わないことがある。特定の一点にピントが合った写真が欲しいなら、用心のために複数枚同じアングル・設定の写真を撮らないといけない。
  • ホワイトバランス。夜間・屋内の飲食店で料理を撮影する場合、手動でカスタムホワイトバランスを適切に設定しないと思ったような色合いが出ない。オートホワイトバランスや白熱灯モードでは解剖写真のような色合い(色としては正確でも、青白くて不味そうな色合い)になってしまうので、例えば白熱灯を光源に使っている場面ではあえて蛍光灯モードにして撮影することが多かった。

 写真好きな人の場合、誰しも特に「これが好き」という被写体があると思います。私の場合は料理なのですが、料理を撮るときにはいつも「この旨そうなワクワクする感じをどうやって画として残すか」ということを念頭に置いています。なので、上記二点はある程度ユーザーの使い方しだいでカバーできる問題ではありますが、使っていながらとても惜しいと感じていました。

的確なサービス、楽しい時間

 ちなみに先述のように、昨年末にもフェア・ドマにランチに行ったのですが、その時には連れはおらず、私一人で行きました。そのためメールでランチの予約を入れるときに「耳が悪いので筆談で対応してもらえると助かります」と伝えておきました。

 当日お店に入り席についたところ、当日のランチメニューをプリントアウトしたものを渡してもらいました。また、それをもとにメインの料理について質問したところ、シェフが直接(口頭よりも時間はかかりますが)筆談で一品一品について丁寧に説明してくれました。おかげでちゃんと選択肢を把握した上でどれにしようか悩みつつ(楽しみつつ)注文を出すことができました。

 また、一通り食べ終わって「カプチーノはありますか?」と聞いたところ、スタッフに「うちではカプチーノはお出ししませんが、エスプレッソとミルクを別々にしたものならお出しできます」とこちらも筆談できちんと対応してくれました。

 今回のディナーの時も、席の予約自体は家族が電話でしたのですが、それとは別に私の方からもお店に「前にランチに来たFですが、今回もお料理について説明したメモのようなものを用意してもらえますか?」と事前にメールで伝えたところ、通常のメニューに加えて、当日のお勧め料理の品目とそれぞれの説明を書いたリストを出してもらえました。

 当たり前のことかもしれませんが、こちら側の事情と要望を具体的にきちんと伝えた上で的確な対応(あるいは期待以上の対応)をしてくれるお店ではやはり安心して楽しめますし、お店に対する信頼感もぐっと上がります。料理やお酒が美味しいことも勿論ですが、こちらの意図を把握した上で的確に対応してくれることが「安心して楽しめ、また行きたくなるお店」の条件だと思います。今回のフェア・ドマにしろ、山の上ホテルの場合にしろ、その条件を満たすサービスを提供しているのは流石だなあと思わされました。

 逆に、お店の人にきちんとした対応をしてほしければこちらからもきちんと働きかけてコミュニケーションをとる必要があるわけで、「色々なお店に行っても、どこでもうまく遊んで楽しめる」人というのはそういうことがきちんとできる人なのかもしれません。

トラットリアの愉悦: F家の場合

 1月は私の誕生日ということで、日本橋フェア・ドマに家族四人でディナーに行ってきました。

 このお店は如星師匠のお薦めで、また自分でも昨年末にランチに行ってみたのですが、料理も美味しいし、シェフを始めとするスタッフの対応も、お店の雰囲気も良かったのでかなり楽しめました。

 とはいっても、

  • 如星師匠曰く、「4〜5人ほどで行って色々と頼んでわいわいやるのが楽しいお店」とのこと
  • シェフの趣味か、グラッパの揃えが非常に多い
  • ディナーは原則二人以上でないと予約できない

……といった理由で、気楽な面子で行くディナーの方がさらに楽しめそうだなと感じていたので、この機会に家族で行ってみようということになったわけです。

 当日頼んだメニューは以下の通り。なお、写真はいずれもPENTAX K10D+フレクトゴン35mm F2.4にて撮ったものです(感度はISO100、ホワイトバランスはオート)。なお、写真のセットはこちら




  • プリモ:
    • 焼きパスタとチーズのソース(写真)
    • 塩タラとキャベツのタリアテッレ
    • 豚バラ肉とあさりのスパゲッティ
    • オーソドックスなジェノベーゼ
  • セコンド:
    • 鶉のグリル ニンニク詰め(写真)
    • 生タラのズッパ・ディ・ペッシェ(魚のスープ)
    • オックステールの煮込み




  • ドルチェ:
    • チョコレートムース ブリオッシュ添え
    • ピスタチオ(?)のアイスクリーム ブリオッシュ添え

 前菜はいずれも素材の旨味が生きており、特に鹿のカルパッチョはバジリコの香り、パルミジャーノの旨味がお肉とよく合っていて絶品。

 プリモのパスタ類も、いずれも美味しかったのですが、塩タラとキャベツのタリアテッレに豚バラ肉とあさりのスパゲッティの二品は素材の相性が意外によく、ソースにいいダシが出ていて一口食べるごとにその旨味に唸らされる出来映えでした。

 メインの料理は、鶉のグリルは鶉肉の旨味とニンニクの香りがよくマッチしており、ついつい夢中になって解体してしまいました。タラのズッパ・ディ・ペッシェも、潮気の強いトマトソースと、鱈・あさり・ムール貝がマッチしていて海鮮の旨味を凝縮したような味わい。オックステールの煮込みも美味しかったです。



 料理を一通り堪能した後は、お待ちかねのドルチェにグラッパ。写真にもありますが、さてグラッパにいこうか、という頃合いになると20種以上はあろうかというグラッパの瓶をテーブルの前に並べ、シェフ自らが嬉々としながらそれぞれのお酒の特徴を解説し、瓶を開けて香りを嗅がせてくれます。酒好きには堪らない至福の時間といえましょう。

 強めのもの、弱めのもの、樽で熟成した木の香りが移っているもの、果物を思わせる華やかな香りがするものと様々な銘柄が揃っている中で何を選んだらよいか迷ったのですが(この迷う時間もやっぱり楽しかったりするのですが)、チョコレートムースとの相性も考えて独特の甘味があり、ほのかにバニラの香りもする“LE PERGOLE TORTE”という銘柄のものにしてもらいました。チョコレートムースの甘味とコク、ブリオッシュの香り、グラッパの芳香が渾然一体となり、これまた至福の味わいでした。

 このお店のディナーに行ったらとても楽しいだろうなあ、という期待があったのですが、その期待を裏切らないすばらしい時間を過ごせて、みな大満足で帰宅の途についたのは言うまでもありません。また(写真撮りも兼ねて)ランチに行きたいなあ……。